さかもとのブログ

つらつらと

ハイル・ヒットラーってか

たぶん今年最後のブログが(ほとんど更新していない!)、ヒットラーってもなにかね、寒い冬とはいえ、ちゃんこにヒットラーを入れてしまうのはどうだろう、思ったけれど、もしかしたらいいだしがでるかもしれんと思って、書くことにしました。

「意志の勝利」を見ました。ナチのプロパガンダ映画です(正確にはナチの党大会の記録映画です)。1934年作成されたもので、パリ万博でグランプリを取りました。
監督はレニ・リーフェンシュタールという女性で、彼女はそのとき35歳でした。

意志の勝利 [DVD]

意志の勝利 [DVD]

どうしてこんなものを見たのかというと、小林秀雄全作品13の中に、「オリムピア」という評論があって、この評論は

「オリムピア」という映画を見て非常に気持ちがよかった。

という出だしで始まるもので、こんなふうに彼に気持ちよく書かせるのだから、よほどの映画なのだろう、で、その監督がリーフェンシュタールで、「意志の勝利」も”いい映画”なんだろうと思い、比較的時間に余裕のある今のうちに見てしまおうと思ったためです。

さて、この映画、プロパガンダ映画です。昭和61年生まれの自分にとっては、そもそも”プロパガンダ”という言葉になじみがありませんし、意味もわかりません。宣伝といえば何となくわかるけれど、わざわざ宣伝映画と言わずにプロパガンダ映画といっているので、これは”宣伝”ではなく”プロパガンダ”でなければならないのでしょう。プロパガンダ映画と言われたって、その言葉だけでは、なんのこっちゃわかりやしません。
冒頭、真っ暗な画面で気分を高揚させる音楽から始まります。一通り音楽を終えると簡単に、最近のドイツの説明が始まり、上空からのドイツの映像、そして到着した飛行機から出てくるヒットラー総統です。このときの熱気がすごい。これほど生き生きとした人間の顔はそう見られるものではないんじゃないでしょうか。このまえヒッキーのライブをustで見ていましたが、そのときの熱気を凌いでいるように感じます。そこには狂気があるわけです。純粋なる優秀なドイツ民族、そこへの狂気です。
まぁはっきり言ってしまえば、この映画は、それがずっと流れつづけるわけです。ヒットラー総統のもと、純粋なる優秀なドイツ民族を実現し、ドイツは強くなる、我々は闘うのだ、ヨーロッパ中に知らしめてあげよう。ずっとそれです。眠くならないのか、といえば嘘になります。途中うっつらうっつらしていました。

映画にはいくつかの集会の映像が入っています。国家労働奉仕団野外集会、突撃隊夜間集会、ヒトラーユーゲント集会...。どの集会でもヒットラーの演説と「ハイル ヒットラー(ヒットラー万歳)!、ジーク ハイル(勝利万歳)!」です。ジークって何に対して?って感じですが、とにかくジークなのです。ドイツ民族を苦しめるものにジークなのです。世界にジークなのです。ここらへんは第一次世界大戦のせいでしょう。
集会に参加している人は、もうヒットラーしか見えていません。で、集会ですが、夜の集会は、光や火の使い方がいやらしくヒットラーの存在を浮きだたせています。その撮り方も実にいやらしい。これをヒットラーを信じている青年が見たらどうだろう、きっといちころでしょう。映画を見終わって彼らが叫ぶ「ハイル ヒットラー!ジーク ハイル!」が聞こえてきそうです。そういう意味でいい映画です。
これがプロパガンダってやつですね。

クライマックスは第6回党大会の閉会式です。誰もが真剣に右手を挙げている中で、ヒットラーが入場してきて演説が始まります。
神妙な顔つきで話し始めます。...(下に演説文を載せます)
この演説、書き起こすと何を言ってるって感じですが、声と手振りに、参加者は完全に浸っています。ハイル!ハイル!と叫びながら。リトルピープル的なものを見ずにはいられないでしょう。
演説終了後、恍惚とした表情で副総統(ルドルフ・ヘス)が壇上に上がり、こう叫びます。

ハイル!
党とはヒットラー
ヒットラーはドイツ!
ドイツはヒットラー
ジーク ハイル!

と。
そのあとはナチの党歌が流れて終わりです。

この映画を見て、ドイツ国民こそがナチを動かしたのだ、と思わずにはいられません。そしてそれはどこの国でもたぶんそうです。指導者は種を見つけ、そこに種があるのを国民に教えるだけ。それを育てるのは間違いなく国民です。この映画を見れば誰だってわかります。
おぉ恐い。弱い自分もいつそこにいくのかもしれないと思うと恐い。気をつけないと。大審問官に。それと小さな声でもしっかりと外へ向けること、自分で考えること。
ところでヒットラーの顔ですが、ちょっと滑稽に見えてしまう。あの髭のせいで。それは彼の狙いだったのかもしれません。表情の柔軟さが人を惹き付けるのか。あの滑稽な顔は、演説では鬼のような顔になる。その差分が、演説をする彼に惹き付けられる何かを生み出すのかもしれません。

さて、2011年はどんな年になるんですかね、民主党さん。

ヒットラーの演説を載せます。

第6回党大会もいよいよ終幕に近づきつつある この大掛かりな大会が部外者にはどうみえたか 単なる示威運動と映ったかもしれない しかし 我々同志にとってははるかに大きな意義を持つものであった 年来の戦友や支持者が一堂に会して絆を確かめ合ったのである あるいは 諸君の中には 我らの壮大なパレードに胸躍らせながらも過ぎし日を思い出した者もいたであろう その当時 党の一員であることは危険を意味した

ここでちょっと拍手が起こります。そしてヒットラーの目つきが変わる。演説に腕の動きが加わる

わが党は わずか7名の党員で活動していた頃から 2つの原則を掲げている まずイデオロギーに基づく運動を行うこと そしてこの党がドイツにおける唯一無二の力であることだ (拍手喝采)
党としては長らく我々は少数派であった なぜなら いつの時代でも価値ある闘争をし犠牲を払うのは社会の多数派ではなく少数派であるからだ しかし 我らが党員はドイツ国において 最も優れた人々であり 自信と誇りをもってこの国の主導権を主張した 
だからこそ多数の人民がこの運動を支持し始めたのである ドイツ国民は幸せだ 政権交代の歴史がようやく終わりと告げ 今や強力な指導体制が確立されたのであるから (みんな立ち上がりナチ敬礼)
最高の血を受け継いだと自負する者たちがこの国を掌握した 国民の最大の福祉のためにその指導権を行使し 二度と手放さない覚悟である これから先も一握りの国民だけが真の闘士であり続けるだろう 彼らに課せられる要求は他の国民より はるかに大きなものとなる 
”私は信ずる”という制約は十分とは言えない 彼らのモットーは”私は闘う”である! わが党は ドイツ国民の政治理念をこれからも体現し続ける 我が党の原則は常に不変である 組織自体は鋼のように固く 構成員は柔軟で適応性に富む まさに聖なる政治集団となるだろう
我らは実現する 健全なドイツ人は国家社会主義者となり もっとも優れた者たちは国家社会主義党員となる! (ハイル!ハイル!) 
これまで時として我々の反対者たちは 我が党に圧力をかけ迫害してきた その結果党内の不要な連中を取り除いてくれた 今日望ましくない分子は我々の手で選別し 追放しなければならない 我が党に彼らの居場所はない 我らが願うのはドイツ帝国がこの先何年も続いていくことだ 我らは満ち足りた思いだ 
ドイツの未来は完全に我々の手の中にある 年長者には懐疑的なものもいるだろう だが若者たちは身も心も一途に我々に捧げているのだ! (ジークハイル!ジークハイル!) 
今や我々は一致団結して党の理念と精神を最高の形で具現化している 国家社会主義の思想と精神が実現される その時我々の党は ドイツ国民と我が帝国にとって 永久に朽ちることのない支柱となるのだ (ハーケンクロイツが映し出される) 
我が国の偉大な陸軍も重要である 古参の誇り高き国の守り手を我が党が政治的に主導する 伝統を重んじる彼らは我らに協力を申し出るだろう 共に手を携えてドイツ国民を教育し 肩の上に国家を背負い ドイツ帝国を支えるだろう 
この瞬間にも 大多数の党員たちはこの市を離れつつある この数日の思い出に浸っているかもしれない すでに次の会合の準備を始めている者もいる 人々は再び集い そして去る そのたびに深く感動し鼓舞されるだろう 我々の理念と運動は国民の意思の生きた表現であり 永遠の象徴であるからだ 国家社会主義運動 万歳! ドイツ 万歳!(全員右手を挙げながら、ハイル!)